広告として詠まれた俳句

昭和28年に刊行した『雲』という俳誌があった。これには当時の多くの、有名な、企業や料理店から<毎月、俳句による広告を掲載してもらいました。

会社 俳句 出典
東京海上火災株式会社 稲妻や犬口炎やす火除札 『雲』昭和33年9月
東京海上火災株式会社 初凪の濤金銀に船の四方 『雲』昭和34年1月
武蔵野銀行 寄るものの多し翅なす新樹光 『雲』昭和33年5月
三菱電機株式会社 蛍光灯読書の秋を深めたり 『雲』昭和29年10月
三菱電機株式会社 三菱のミキサー厨涼しうす 『雲』昭和30年6月
三菱電機株式会社 梅既に白くさやけきテレビかな 『雲』昭和31年2月
三菱電機株式会社 三菱のテレビ賑わふ十二月 『雲』昭和32年12月
三菱電機株式会社 ダイヤの指に撫さるる思ひ扇風機 『雲』昭和33年6月
八幡製鉄株式会社 東海の鉄の都の初茜 『雲』昭和32年1月
八幡製鉄株式会社 初凪の鉄都や砂もかがやかに 『雲』昭和33年1月
日本鋼管株式会社 春はあけぼの硫安の白美しく 『雲』昭和28年10月
日本鋼管株式会社 コルタール拓舎晩夏の雨弾く 『雲』昭和28年10月
日本鋼管株式会社 夕焼けて鉄を打つわれは男の子 『雲』昭和28年10月
日本鋼管株式会社 出来て行く船のかたちや天高く 『雲』昭和28年10月
日本鋼管株式会社 鯊の汐かがやき満ち来大船梁 『雲』昭和28年10月
日本鋼管株式会社 男の子はも鉄のごとかれ端午節 『雲』昭和30年5月
日本鋼管株式会社 国再興去年今年なく鉄つくる 『雲』昭和30年12月
日本鋼管株式会社 天寒し日本人皆真剣に 『雲』昭和31年12月
日本鋼管株式会社 造船の海国日本端午節 『雲』昭和32年5月
日本鋼管株式会社 造船の汐あたたかに鯊の秋 『雲』昭和32年10月
日本鋼管株式会社 春光にもつとも軽く進水す 『雲』昭和33年3月
日本鋼管株式会社 良夜なり大きな鋼発光す 『雲』昭和33年10月
日本鋼管株式会社 鮮しき鉄管転びて若草へ 『雲』昭和34年3月
日本鋼管株式会社 白南風や舶に組まるる鈑の照り 『雲』昭和34年6月
大日本印刷株式会社 梅桜文化の泉湧くところ 『雲』昭和30年4月
大日本印刷株式会社 輪転機より涼風の紙の瀧 『雲』昭和29年9月
鳥越商店 ビニールに春光嵬め乙女たり 『雲』昭和30年3月
王子製紙株式会社 パンの手を拭いおらんだふみ曝す 『雲』昭和33年7月
本州製紙株式会社 夜の秋の灯にうつくしき紙の嵩 『雲』昭和29年7月
本州製紙株式会社 陶の肌もてかがやける紙の秋 『雲』昭和30年9月
本州製紙株式会社 咲き満ちて桃李映ろう紙の艶 『雲』昭和31年3月
国策パルプ工業株式会社 おのづから園に経あり雪柳 『雲』昭和31年3月
東洋紡績株式会社 ダイヤモンドかがやき通る梅日和 『雲』昭和32年3月
太平電業株式会社 万緑や杞憂もあらぬ第二の火 『雲』昭和33年8月
太平電業株式会社 静かなる歳晩火力発電所 『雲』昭和33年12月
太平電業株式会社 口ごもる春雷や火力発電所 『雲』昭和34年4月
神戸工業株式会社 死の灰の降る涯の蝶茫々と 『雲』昭和34年4月
高見沢工機株式会社 滴りのなき夕焼けのバルブかな 『雲』昭和30年7月
日清製粉株式会社 冬ぬくし皆健康にはち切れて 『雲』昭和30年2月
明治油脂株式会社 夏痩せを吹ツとばしたる女かな 『雲』昭和29年8月
明治油脂株式会社 酷暑期のあしたゆふべのバタの味 『雲』昭和29年8月
山楽酒造株式会社 日の幸(サン・ラック)恋路の幸となる樹陰 『雲』昭和33年4月
季節料理八重洲 烏賊そしに早春青きパセリ添え 『雲』昭和29年3月
季節料理八重洲 一ニ盃梅雨の憂きこと忘じけり 『雲』昭和29年6月
季節料理八重洲 走馬燈涼しき風にまわりけり 『雲』昭和29年7月
季節料理八重洲 青き灯に味覚の秋のいたりけり 『雲』昭和29年8月
季節料理八重洲 秋めけば酒の友垣今宵また 『雲』昭和31年8月
季節料理八重洲 若鮎の踊るかたちにやかれけり 『雲』昭和31年6月
季節料理八重洲 春寒き夜は殊更に酒の味 『雲』昭和33年2月
季節料理八重洲 夏痩せを知らぬ友どちビール酌む 『雲』昭和30年8月
季節料理八重洲 春宵の一刻愉し八重洲の灯 『雲』昭和30年3月
季節料理八重洲 夏めける灯にそよ風や醉足れり 『雲』昭和30年5月
季節料理八重洲 ふき竹の子春たけなはに酒うまし 『雲』昭和29年4月
季節料理八重洲 涼しき灯市井の中の八重洲の灯 『雲』昭和31年7月
季節料理八重洲 酒甘し花冷えいづか忘れ居り 『雲』昭和30年4月
季節料理八重洲 梅雨寒の指が持ちたる蟹の脚 『雲』昭和30年6月
季節料理八重洲 青すだれ酢のものの香をはこびけり 『雲』昭和31年7月
季節料理八重洲 秋もやや涼しと思う酒座の風 『雲』昭和31年9月
季節料理八重洲 花冷えの夜は春ながら熱き燗 『雲』昭和31年4月
季節料理八重洲 霜の夜の海鼠の味の歯に透る 『雲』昭和31年11月
季節料理八重洲 松茸に銚子の数をかさねたり 『雲』昭和29年10月
季節料理八重洲 ささやかに忘年会の鍋煮ゆる 『雲』昭和29年12月
季節料理八重洲 白菊のまさしく匂う夜の酒 『雲』昭和31年10月
季節料理八重洲 五月の野夢みる微酔つづきけり 『雲』昭和29年5月
季節料理八重洲 お酉さまの帰りだといふ客の数 『雲』昭和30年11月
季節料理八重洲 牧水が詠みし秋夜の酒ぞこれ 『雲』昭和30年10月
季節料理八重洲 七月の青嶺の川の鮎を焼く 『雲』昭和32年12月
季節料理八重洲 北風を来し心ぬくもる八重洲の灯 『雲』昭和32年12月
季節料理八重洲 銀杏のかんばしき香よ酒酌まな 『雲』昭和32年10月
季節料理八重洲 新涼の灯は室町の八重洲の灯 『雲』昭和32年9月
季節料理八重洲 雨の酒座いよいよ若葉匂ひけり 『雲』昭和32年5月
季節料理八重洲 鏗喰ふときの皓歯や夏乙女 『雲』昭和32年6月
季節料理八重洲 とどまらぬ酒座の笑ひや夜半の春 『雲』昭和32年4月
割烹山正 恋の影窓に動かぬ春の月 『雲』昭和30年10月
割烹松園 冬鶯の庭に来てゐるめざめかな 『雲』昭和29年2月
割烹喜楽 如月のひかりをはこぶ多摩の波 『雲』昭和29年2月
まる菱 酒をつぐ即ち花を惜しみつつ 『雲』昭和29年4月
小料理山村 熱燗や友情ここにこまやかに 『雲』昭和28年10月
COFFEE HIRO 駅近く静夜の若きふたりかな 『雲』昭和28年10月
COFFEE HIRO 如月の風に追われてひろに来ぬ 『雲』昭和29年2月
COFFEE HIRO 踏青の余情をひろの卓の灯に 『雲』昭和29年6月
COFFEE HIRO ビールたのしヒロの革椅子ならしつつ 『雲』昭和29年6月
COFFEE HIRO 羅に新橋の妓のおひろ艶 『雲』昭和29年8月
COFFEE HIRO カーテンの白き囁きヒロの夏 『雲』昭和29年7月
COFFEE HIRO 花疲れ「ヒロ」の珈琲の香に咽せて 『雲』昭和29年4月
COFFEE HIRO 秋深き夜をたのしくヒロの卓 『雲』昭和29年10月
COFFEE 窓 思いがけざる春燈の窓一つ 『雲』昭和29年2月
ホテル不二 食堂におでんありてホテル不二 『雲』昭和29年3月
自然法象学研究会 吉方位取り涼風の夏座敷 『雲』昭和30年8月
都会議員篠統一郎 銘木の柱かがやく炉辺の冬 『雲』昭和33年11月

有風と哈爾濱俳句目次
最初の哈爾浜
二度目の哈爾浜
引揚
戦後

太平洋戦争レーダー史
【PREMIUM】
抑留者の俳句
信之論 高杉晋一
俳句の広告
香水を詠む