日本技術史

蛾は燈に集まり、人は電光に集まる。輝くものは天下を牽く。金銀、しゃこ、瑪瑙、瑠璃、閻浮壇金、の属を挙げて、悉く退屈の眸を見張らして、疲れたる頭を我破と跳ね起させる為に光るのである。
昼を短しとする文明の民の夜会には、あらわなる肌に鏤めたる宝石が独り幅を利かす。…
文明を刺激の袋の底に篩寄せると博覧会になる。博覧会を鈍き夜の砂に濾せば燦たるイルミネーションになる。
虞美人草 夏目漱石 1910年