東大寺戒壇堂広目天
東大寺戒壇堂にある広目天は無限の未来を観るという。
英国はレーダーを
金鶏に例えた。『金鶏』はリムスキー・コルサコフが作曲したオペラに登場する占星術師が飼っている鳥で,危険が近づくと「警戒しろ,用心しろ。」と鳴く。
ドイツの航空機監視レーダー『
フライア』は北欧の神話に登場する戦いの女神である。
第二次世界大戦では始めてレーダーという電波の反射を利用して敵の情報を得ることができるエレクトロニクス装置が誕生した。1941年12月に真珠湾攻撃で始まった戦争は,約1年後から戦闘での敗戦が常となった。戦闘での敗因の一つは日本が運用に耐えるレーダーを持っていなかったためであると言われている。それでは日本のレーダーの技術が遅れていたのか,電子機器の生産力に劣っていたのか,それとも研究・開発体制に問題があったのか。英米は勿論,敗戦国のドイツでは開発されて使われたレーダーは整理した記録が残されているらしい。
しかし我が国では機器も資料もほとんどが処分された。それでも米軍の調査記録や,開発や運用に携わった方々が遺した貴重な記録や.戦記がある。なかでも「海軍レーダー徒然草」,「横浜旧軍無線通信資料館」,「沼津市明治史料館」,関係する会社の社史の記録,そして真空管に関する記録である。この「太平洋戦争レーダー史」はこれらの資料から欧米,ドイツのレーダーとわが国のレーダーの開発の歩みを整理した試みである。
敗戦後,日本のエレクトロニクス産業は世界に比するまでに発展した。この発展には戦中に軍や民間会社でレーダーに携わった科学者や技術者が貢献した。
半世紀前の,この戦争での我国の犠牲者は凡そ250万人,世界中で亡くなられた方は5千万人と言う。これらの方に祈りつつ校了。