近接信管

レーダー利用の近接信管

近接信管
近接信管
航空機の速度が速くなると,高射砲の命中率が低くなる。このため砲弾を敵機の近くで起爆させる近接信管の開発が始まる。英国では光の反射や,ドップラー効果を利用する実験が行われていた。ドイツも音響信管や電波利用の信管を開発していた。日本でも阪大の浅田常三郎が地上からの反射光を光電管で検出して,高度数10mで起爆させる有眼信管を開発していた。
1940年から始まった英米のレーダー共同開発で英国は近接信管の研究も公開する。米国のチューヴ博士が超小型の送受信機,起爆装置,安全装置,電源を砲弾に内蔵して,砲弾が敵機から一定の距離に近づいたら起爆する近接信管の開発をを提案すると,8月17日に国家防衛研究委員会の中に近接信管を専門に開発する『セクションT』が設立される。リーダーはチューヴ博士である。米海軍が開発に協力し,陸軍と英国は開発された近接信管を使うことに同意する。
開発の難関は砲弾が発射される時に加わる重力の2万倍の衝撃に耐えることができる真空管の開発であった。1941年,海軍基地内に試験場をつくり,電子回路を入れた砲弾を1日に数百発射して試験を行う。1942年1月に試作品が完成する。これを5インチ砲弾に組込で試験すると,ほぼ半数が起爆に成功する。4月には気球に吊り下げた実物大の模型飛行機を砲撃し成功する。開発人員は1942年に1000人以上になる。 1942年(昭和17年)8月12日バルチモアのチェサピーク湾で試射が行われ,無人機2機を瞬く間に撃墜するした。
この近接信管の周波数は180-220MHz,真空管は砲弾一発に4個を使うが1個の重さは僅か3グラムである。送信アンテナは砲弾の外郭,受信アンテナは頭の部分に埋め込まれている。電池は電解液が密閉されたガラス容器に入っていて,発射の衝撃でガラスが割れて液が混合し,発射後0.1秒経過してから電気が流れる。電池寿命は2分である。すぐに量産が始まり9月には5000個を生産する。1944年(昭和19年)の末には1日に4-7万個が生産される。
近接信管のエレクトロニクス
近接信管のエレクトロニクス
1943年1月5日,ニュージョージアで巡洋艦『ヘレナ』がこの信管を実戦で初めて使い,その5インチ砲で日本機を撃墜する。近接信管は地上で使用すると不発弾が敵に発見されて真似されるので,秘密保持のために海上以外での使用が禁止された。

マリアナの七面鳥撃ち

打ち落とされる日本機
打ち落とされる日本機ー6月19日
西太平洋のマリアナ諸島に日本軍の基地があった。マリアナ諸島はサイパン島,テニアン島,ロタ島,グアム島等からなる諸島で第1次世界大戦後に日本の統治領となった。日本からの距離は2200kmである。
米はマリアナをB-29爆撃機の基地とするために占領作戦を進める。1944年3月31日に古賀峯一司令長官がパラオから飛行艇で移動中に消息不明になり,豊田副武大将が連合艦隊司令長官となって『あ号作戦』を発令する。『あ号作戦』は連合艦隊を決戦海域に集中して,米空母部隊と攻略部隊を撃滅する作戦であった。しかし『あ号作戦』の暗号も米軍に解読されていた。
欧州でノルマンディー上陸作戦が行われている6月6日,米機動部隊がマーシャル諸島からマリアナに出撃する。空母15隻,巡洋艦21隻,駆逐艦61隻,航空機891機である。6月11日に延470機がサイパン島,テニアン島,ロタ島,グアム島を空襲する。6月12日の空襲は1400機。6月13日から艦砲射撃を開始し,6月15日の早朝に米軍はサイパン島,テニアン島へ上陸する。小沢中将の空母9隻,戦艦5隻,巡洋艦13隻,駆逐艦28隻,航空機430機はフィリピン南方のタウイタウイ島からマリアナへ向かう。6月19日,日本軍偵察機がサイパン島の西約700kmに米空母部隊を発見し09:35にに64機の攻撃隊が発進して米艦隊を攻撃
08:10,米潜水艦が発射した魚雷が空母『大鳳』に命中し沈没,11:20に空母『瑞鶴』が魚雷4本を受けて沈没する。小沢中将は体制を立て直すため全艦隊に北上を命じる。スプールアンス中将は北西400kmに日本軍機動部隊を発見して,戦闘機85機,急降下爆撃機77機,雷撃機54機が16:30に発進し日本機動部隊の空母『飛鷹』を轟沈,空母『瑞鶴』,『隼鷹』,『龍鳳』,『千代田』と空母の大半が損傷する。
7月7日にサイパン島日本軍全員が玉砕する。南雲長官の最後の電報は
『われら玉砕をもって太平洋の防波堤たらんとす。』
島の民間人約1万人がサイパン島の北端にある高さ60mのマッピ岬から飛び降りて自決する。

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佐々木 梗 横浜市青葉区
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