米国艦船搭載レーダーの急速な進歩
艦船搭載早期監視レーダー
巡洋艦『セメス』に搭載のレーダー SC と SG
開戦時,米国は航空機早期監視レーダー CXAM を全ての空母に装備していた。CXAM の航空機探知距離は70kmで,航空機の高度を測定する機能も無く,さらにAスコープはそれぞれの航空機を識別できなかった。
探知距離を210kmにするため出力を大きくし,航空機の高度を測定するビーム切り替え方式を備え,表示装置をPPIとした SK を完成させて,1942年にCXAMを換装する。
SK のアンテナは4.6m×4.6mと大きいので,駆逐艦に装備できるようにアンテナを小型にした SCを開発する。
名称 |
完成年 |
周波数 |
出力 |
アンテナ |
航空機探知距離 |
CXAM |
1941 |
200MHz |
15kW |
5.2×5.5m |
70km |
SK |
1942 |
200MHz |
330kW |
4.6×4.6m |
140km |
SC |
1942 |
200MHz |
330kW |
1.5×4.5m |
42km |
艦船搭載射撃制御レーダー FA Mark 1
1937年にウェスタン・エレクトリック社が750MHzを発生できる3極管 316A を開発する。直径が5.7cmのドアのノブの形をしているのでドアノブ管と呼ばれる。ウェスタン・エレクトリック社は 316A を使って周波数750MHzの射撃制御レーダーを1939年7月に試作して海軍と陸軍にデモする。
16kmの距離の艦船を探知し距離精度は良かったが,方向精度が悪かったので陸軍通信研究所が開発していたビーム切り替え方式を採用する。1940年4月に試作レーダーが完成し12月にテストが成功して10台が注文される。これが艦船搭載射撃制御レーダー CXAS ( FA Mark 1 )で,1号機が1941年6月に完成する。送信管 316A は最大出力で使うと約75時間で壊れるので頻繁に送信管を交換しなければならなった。
FA Mark 1 の仕様
周波数 | 500MHz |
出力 | 2kW |
艦船探知距離 | 18km |
航空機捕捉距離 | 50km |
アンテナ回転 | 手動 |
3極管 316A
艦船搭載射撃制御レーダー FC Mark 3
英国からマグネトロンの技術が入ると,周波数750MHzの FC Mark 3を開発し1941年10月に『フィラデルフィア』に搭載する。FC Mark 3 は125台製作された。
FC Mark 3 の仕様
周波数 | 750MHz |
出力 | 40kw |
パルス幅 | |
パルス繰り返し周波数 | 1640Hz |
大型艦捕捉距離 | 18km |
航空機捕捉距離 | 9km |
距離精度 | 36m |
水平方向精度 | 2mils |
アンテナ | 1.8m×1.8m |
『ニューメキシコ』に搭載の射撃レーダー FC Mark 3
艦船搭載射撃制御レーダー FD Mark 4
5"砲用の射撃制御レーダーで,FC Mark 3 に高さ方向のビーム切替え装置を付加した。1941年に完成し,375台製作された。
FD Mark 4 の仕様
周波数 | 750MHz |
出力 | 40kw |
パルス幅 | |
パルス繰り返し周波数 | |
大型艦船捕捉距離 | 27km |
航空機捕捉距離 | 37km |
距離精度 | 37m |
Bearing Accuracy | 4mils |
Resolution | 370m,10degrees |
射撃レーダー FD Mark 4
フェイズド・アレイレーダー FH Mark 8
海面からの不要な反射波を減らすためにフェイズド・アレイレーダーを開発する。42素子のポリロッドアンテナで構成される
MUSAである。。ウェスタン・エレクトリック社が1942年10月から製造を始め,205台製造された。
FH Mark 8 の仕様
周波数 | 3GHz |
出力 | 15-20kW |
パルス幅 | 0.4μ |
パルス繰り返し周波数 | 1500kHz |
ビーム幅 | 2度 |
大型艦船捕捉距離 | 37km |
距離精度 | 5m |
Bearing Accuracy | 2mils |
Resolution | 370m,10degrees |
射撃レーダー FH Mark 8
艦船搭載マイクロ波レーダー SG
英米のレーダー共同開発がスタートすると,米は英国が開発したマイクロ波レーダー Type 273 を参考にして,艦船搭載マイクロ波レーダーを開発する。開発機を,1941年6月に巡洋艦『セメス』に搭載して試験が成功,1942年に完成する。レイセオン社が約1000台生産する。
昭和17年10月11日深夜,ガダルカナル島のエスペランス岬沖で『ヘレナ』と『オーガスタ』が搭載しているマイクロ波レーダー SG が日本海軍の巡洋艦と,3隻の駆逐艦を探知して撃沈する。これから後,日本海軍がそれまで得意としていた夜戦が使えなくなる。
SG の仕様
周波数 | 3GHz |
出力 | 50kW |
パルス幅 | 1.3-2.0μs |
パルス繰り返し周波数 | 775Hz |
水平ビーム幅 | 5度 |
垂直ビーム幅 | 15度 |
距離精度 | 180m |
探知距離(艦船) | 27km |
探知距離(潜水艦) | 9km |
アンテナ | パラボラ |
マイクロ波艦船搭載用レーダー SG
SG 操作盤
艦船搭載自動追尾射撃制御レーダー SM
SM
放射波研究所がマイクロ波を使用して,目標を自動追尾するレーダー SCR-584 を完成すると,米海軍は艦船搭載用の CXBL を開発し,1943年3月に空母『レキシントン』に搭載する。これが SM である。ジェネラル・エレクトリック社が製作し,10月に空母『バンカーヒル』と,空母『エンタープライズ』に搭載する。
SM のアンテナ台は2.5トンと重たいので,小型の艦船にも搭載できるように重量を半分にした SP ,FJ , FL も開発する。
佐々木 梗 横浜市青葉区
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