ウルツブルグ レーダー

WÜRZBURG A

テレフンケン社の ルンゲ 博士は,

レーダーなんて空想科学物語の物だ。

と言っていた。しかしGEMA社が開発に成功するとルンゲも開発を始める。1935年に周波数600MHz,出力5Wのマグネトロンを使って高度5000mを飛行している爆撃機ユンカースJu52からの反射波波を捉えた。翌年1936年にテレフンケン社は送受切り替え装置と、パラボラアンテナを開発して、パルスレーダー Darmstadt を開発した。これは5km離れた航空機を距離精度50mで探知した。フンケン社は周波数600MHz、出力15kWの送信管 LS180 を開発し、これによりレーダーの探知距離が延びる。これが WÜRZBURG A である。テレフンケン社の技術者が目を閉じて手に持った針を地図に刺すと、そこがドイツのウルツブルグ市であったのでこの名になった。1939年7月にヒトラーが視察して装備が決まる。4000台作られた。

WüRzburg A
Würzburg A

WÜRZBURG A FuMG 39T "A" の仕様
周波数560MHz
パルス幅2μs
パルス繰返し周波数3750Hz
出力8kW
探知距離20-30km
距離精度25m
アンテナ3mバラボラ

LS180
3極管 LS180

WÜRZBURG D

WüRzburg D
Würzburg D

WÜRZBURG A はアンテナ操作が手動であった。WÜRZBURG B で赤外線を併用したがうまく操作できなかった。WÜRZBURG C はローブスイッチング機能を備えて目標を捕らえることが容易になる。1940年5月,WÜRZBURG C を使った高射砲がエッセンで航空機を撃墜すると、全ての高射砲が WÜRZBURG C を備える。
1941年にコニカルスキャン機能を備えた WÜRZBURG D が開発されて水平方向の精度は2度、高さ方向の精度は3度に向上する。
戦争中に日本が潜水艦を使って技術導入するのはこの WÜRZBURG D である。
WÜRZBURG D FuMG39 T"D" の仕様
周波数A:550-580MHz B:470-490MHz
パルス幅1-2μs
パルス繰返し周波数3750-5000Hz
出力8kW
探知距離1.6-40km
距離精度10m
水平方向の精度2度
垂直方向精度3度
アンテナ3m バラボラ
表示装置4CRT:azimuth,elevation,range
Block Diagram

WÜRZBURG-RIESE

ウルツブルグ・リース
WÜRZBURG-RIESE FuMG

WÜRZBURG Dは射撃制御レーダーとして優れた性能であった。しかし夜間戦闘用としては探知距離が短かった。さらに探知距離を延ばし、探知精度を向上させるためにパラボラアンテナの直径を7.4mに大きくした WÜRZBURG-RIESE FuMG65 を開発する。初号機はベルリン近くの高射砲部隊に配備される。探知距離は78kmに延びる。距離精度15m、水平方向の精度は0.36度、高さ方向の精度は0.9度である。
ドイツは早期警戒レーダー FREYA 1台と射撃制御レーダー WÜRZBURG 2台を組み合わせて防空レーダー網 ヒンメルベット を構築して独、仏沿岸に配備して英仏海峡を警戒していた。

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佐々木 梗 横浜市青葉区
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