ケンブリッジ大学

トリニティ・カレッジ

エディンバラ大学卒業後にケンブリッジ大学に行くことになる。どこのカレッジに入るのが良いかを，父はエディンバラ大学のフォーブズ教授やグラスゴー大学のトムソン教授に相談する。フォーブズ教授はトリニティ・カレッジを強く勧めるがマックスウェルは友達のテイトが通うピーターハウスに入学した。しかしピーターハウスでは数学の特別研究員になれる機会が少ないので３ヶ月後にトリニティ・カレッジに転校する。

ケンブリッジ大学の数学

１９世紀前半に英国は世界の工場になった。しかし独,仏も産業が急成長して英国の地位が徐々に低下する。１８４７年にヴィクトリア女王の夫のアルバート公が大学の改革を指示する。ケンブリッジ大学ではニュートンの流率法が主流であった。エディンバラ大学のマクローリンはニュートンの流率法を支持していた。一方，改革派は数学者のバベッジ，天文学者のハーシェル達が解析学会を設立して改革を始めた。ケンブリッジ大学にラグランジェの『解析関数論』を採用した。

トライポス

ケンブリッジ大学の卒業試験にはトライポスと呼ばれる優等卒業試験があり，一等級の成績はラングラーと称される。"トライポス"は"三脚の椅子"のことで，試験の時に三脚の椅子に座るのが由来らしい。１８４９年にケンブリッジ大学数学試験委員会が電気と磁気と熱の理論は卒業試験の課題にしないことを決めて，課題は力学，流体力学，天文学，重力，光学から選ばれる。マックスウェルの数学の成績は１位のルースに次いで第２位であった。トライポスの勉強は苦しいものでマックスウェルが詩を書いている。
１８５４年に『曲げによる表面変化の数学的解析』の講演をケンブリッジ哲学協会で行う。この内容にガウス，モンジュ，リュヴィーユの数学を使っていることがケンブリッジ大学の数学教授を驚かせた。１８５５年６月にトリニティを卒業するとフェロー研究員として研究を続ける。テイトはクイーンズ・カレッジ・ベルファストの数学教授になった。

ケンブリッジ大学と日本

明治政府はケンブリッジ大学に留学生を送っている。１８６６年（慶応２年）に徳川幕府が１４名の留学生をロンドンに派遣し，この中に１１歳の菊池大麗がいた。しかし滞在２週間後に大政奉還となり，菊地は仏に留学中であった徳川昭武と一緒に帰国した。菊池大麗は１８７０年（明治３年）に再びケンブリッジ大学のユニバーシティ・カレッジに入学して数学を専攻し，一等級の成績，ラングラーを取る。１８７７年（明治１０年）に卒業して帰国後東京大学理学部教授となり日本近代数学を確立した。

ロンドン万国博覧会

水晶宮

１８５１年５月1日，ロンドン万国博覧会がビクトリア女王によって開催される。翌日の『The Times』が書いた。 博覧会には世界３４カ国が出品する。展示場は造園家のジョージ・パクストンが建設した水晶宮である。会場は長さ564m，高さ33m，鋳鉄1800トン，錬鉄700トン，ガラス30万枚，木材50万立法フィートをプレハブ工法によって６ヶ月間で建設した。この博覧会には蒸気機関を利用した産業機械が多く展示される。英国の鉄道網が完成して鉄道料金は６分の１に値下がりしてトーマス・クックが安い運賃の旅行のパック化を始めて，５ヶ月間の開催期間中に６００万人が訪れる。

電信

１８３３年に独数学者のガウスと物理学者ウェーバーがゲッチンゲン大学と天文台の間1キロメートルに連絡用電信機を試作した。１８３７年に英クックとホイートストンが操作が簡単な電信機を考案して鉄道用に使用される。米国でもモールスが１８３７年に実用的な電信機を発明して，１８４４年にワシントンとボルチモア間に電信回線が開通した。博覧会が開催されるこの年，英仏海峡に電信用の海底ケーブルを敷設されてロイター通信社がパリの相場情報や，ロンドンの金融情報の配信を始める。
水晶宮では標準化された製品を大量生産するための産業機械が多く展示されていた。ダゲレオタイプ，カロタイプなどの写真技術が多く展示される。
マックスウェルはテイトと一緒に博覧会に行き，フーコーの振り子に興味を惹かれた。

共産主義

１８４７年に英国で恐慌が起きて多くの銀行，貿易商が倒産し，この不況が各国にも広がってフランスで１８４８年２月に革命がおきてルイ・フィリップが退陣する。ドイツ連邦でも３月革命が起きて，オーストリア宰相メッテルニヒが解任される。１８４８年２月にマルクスはエンゲルスと『共産党宣言』を出版した。 マルクスはこの万国博覧会について書いた。